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	<title>天使のいる風景</title>
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	<description>お話書いたり、絵を描いたり・・・まったりゆったりの創作サイト</description>
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		<title>３</title>

		<description>　ホタルの季節になると、どうしても記憶…</description>
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			<![CDATA[ 　ホタルの季節になると、どうしても記憶の蓋が開く。そして、誰にも言えない、その思い出が、まるで明滅するホタルの光のように、時には強く甦ってきてケイの気持ちを揺さぶっていく。
　ケイの無言の意味を、リョウは誤解したようだった。　

「忘れろとは、言わねぇよ。むしろ、弟としては、覚えてくれる誰かがいてくれるのは嬉しい――。けど……それがお前で、――お前があいつに心を捕らわれたままでいるのを見るの、辛れぇんだよ！」

　その言葉を、冷静に受け止めている自分がいた。
　リョウが自分を想ってくれているのは、うすうす気がついてはいた。

「……私なんて、リョウ君にそんな風に思われる資格、ないよ。――私、きっと一生、イオリさんのことは忘れられない」

　それが、愛情からなのか、それとも罪悪感からなのか、自分でももう分からなくなっていた。
　イオリとあんな約束さえしなければ、彼は今ここで一緒に呑んでいたのかもしれない。
　実現することのない仮定ばかりが、頭の中を通り過ぎる。

「――忘れろなんて、言ってねぇだろ？　兄貴への想いを抱えたままでも、構わない。兄貴との思い出を偲びたいなら、俺が一緒になって偲んでやるから――。……俺の前で、そんな顔して、一人で抱え込むの、やめろよ」

　リョウ君は、優しい。……優しいけど――本当の私を知ったら、彼は、私のこと、どう思うだろう？
　それは、彼の気持ちを試してみたいというほんのいたずら心だったのか、それとも心の奥底で彼に救いを求めていたからか、あるいは、泣きたい気分でついつい飲み過ぎてしまったアルコールのせいだったのか――。
　どんな理由があれ、ケイはリョウに、二人だけで行くつもりだったホタル狩りの事を話してみたくなった。　

「……ふぅん」

　リョウの答えは、ケイの予想をことごとく裏切った。けなしもしないし、優しく慰めてもくれない。弁護する言葉をくれるわけでもない。

「『ふぅん』って、――それだけ？」
「他に、なんて言えばいいんだよ？」
「だって、私、――私さえいなかったら、イオリさんは死ななかったかもしれないんだよ？」
「それは、結果論でしかない」
「――けど！」
「じゃ、ぜんぶお前のせいにしてほしいのかよっ！？」
「――そういうわけでは……」
「いいか、よく聞け。事実は、『あの日、兄貴が死んだ』ということだけだ。――お前がいなくても、兄貴はあの日死ぬ運命だったのかもしれない。おまえとの約束がなかったとしても、別のところで別のことが起きて、結局アイツは死んでたかもしれないんだ――だから、今更「自分がいなかったら」などと詰まらんことを考えるのは、やめろ」
「……」

　リョウから、思いがけないほどの大きな声が出て、ケイは恐縮してしまった。

　――言い過ぎたか……？

　項垂れたケイを前に、リョウを後悔の念が襲う。
　だから、何とかその場を取り繕おうと、リョウは話題を探した。
　そして、イオリの遺品を整理しているときに机の引き出しの中で見つけた、小さなダイヤの付いた指輪を思い出す。恐らく、それはケイに渡すつもりの物だったのだろう。そう考えると、イオリはさぞかし無念だっただろうとも思うが――。
　大きなことを言う割には、素直に自分の気持ちを口にできないイオリのこと。だから、ケイとリョウとイオリは社会人になっても仲のいい幼馴染の関係でいられたのだ。三人とも、イオリとケイがお互いに思う気持ちには気がついていながら――。
　アイツ、一体、いつ、どんな言葉とともにこれを渡すつもりだったんだろう？

「――兄貴は、お前のこと、誰よりも大切に思っていた筈だ。……そのお前がそんな思いを抱えて生きていくのを、喜ぶと思うか？」

 ケイは頭を横に振った。口は悪いが優しいイオリが、それを望んでいるはずがない。　　

「だろ？」

　リョウは、ずるいかもしれないが、指輪の件はケイに話すつもりはなかった。
　そう言ってやれば、ケイは喜んだかもしれない。――けど、それは彼女の中に、今はもういないイオリをさらに刻み付けることになる。それを、リョウも――おそらくイオリも望んではいないだろう。
　しかし、机の中から指輪とともに出てきた、和歌の書かれたメモ。小さいころから国語が苦手なリョウは、意味がよくわからなかったが、これくらいなら、イオリを偲ぶ話としてケイに聞かせてもいいかと思った。リョウにしてみれば、イオリがこの歌をメモした理由も知りたいという気持ちもないわけではなかったからだ。

「お前さ、大学で古文専攻だっただろ？」
「うん。主に、源氏物語ばかりだけどね」
「――なら、この歌の意味、わかる？」と、リョウは形見のつもりで携帯電話に撮った写真の画像をケイに見せた。
「――それ、どうしたの！？」

　ケイの顔色が変わった。
　嬉しいような、それでいてそれを素直に表すのが恥ずかしいような――。
　それは、イオリの側にいるときに時折見せた、照れるような顔に似ていた。
　久しぶりに特徴のある彼の筆跡を見たからだろうか、あるいはこの歌の意味になにか――。

「兄貴の、机の中から出てきた。――和歌なんてガラじゃねぇから、なんか、意味があるのかと思って、取っておいたんだけど――」
「……だから、イオリさん、あの時ホタル狩りは二人で――って……？」

　ケイは、その歌とあの時のイオリの台詞を思い出して、全てを理解した。
　だが、それを理解したところで、当のイオリはもういない。

「その歌……どう言う意味があるんだ？」
「これ、源氏物語の中で詠われてた――」

　ケイはそれだけ言って、口を噤んだ。
　まるで、心の中の大事な何かを守るかのように。

　――くそっ。いつになったら、兄貴に勝てるんだろう、俺――。

　リョウは、ケイの心の中の大きな部分を占めるイオリに嫉妬した。
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		<dc:date>2013-03-21T23:17:45+09:00</dc:date>
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		<dc:publisher>WOX</dc:publisher>
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		<title>２</title>

		<description>　 ***

「もうすぐ、ホタルの季節だね…</description>
		<content:encoded>
			<![CDATA[ 　 ***

「もうすぐ、ホタルの季節だね」

　今年も廻ってきた、六月。三年前、小さな居酒屋でリョウには内緒でホタル狩りの計画を立てたのが、嘘のようだと、ケイは思った。
　偶然にも、あの時と同じ店。違っているのは、目の前に座っているのがイオリではなく、リョウというだけのことのような気がするが――。

「ああ、もう、三年――だな？」

　リョウは、目の前で寂しげに笑うケイに何と声をかければいいのか、迷う。
　イオリの三回目の命日が近くなってきていた。
　これまでは、ケイに気を遣って彼の話題は避けていたが、そろそろ話題にしても許されると思った。いや、そうでもしなければ、自分自身も前へ進めないような気がしていたのだ。
　そして心を決めて、リョウは間接的にイオリのことを口にした。

「……とうとう、同じ年になっちまったな、俺達」

　しかし、それを聞いたケイの反応は予想――いや期待していたものは違っていた。
　彼女の表情は、「もう三年」ではなく、「まだ三年しか」経っていないことを物語っている。
　言わないほうがよかっただろうか、と一瞬リョウは後悔したが、もう三年もたっているのだからと、自分に言い聞かせる。

「いつまでも、そんな顔してんなよ。……いつまでもお前がそんなんじゃ、――兄貴だって成仏できねぇだろ？」
「……。そんなの、わかってるよ。……でも、頭でわかってても、心がそれを認められない――」

　小さく答えた彼女の声は、堪えてはいたが、自然に涙が混じっていたようだった。
　そう。そんなこと、もうずっと前からわかってる。自分だけが時の流れの中に生きていて、彼の時間はもう止まってしまっていることくらい。でなければ、この喪失感は一体なんだというのだろう？
　もう、手に届かないからだろうか？　それとも、自分だけがまだこの世に生きているという罪悪感？
　そのどちらかはわからない。けど、いずれにしても、ケイがイオリを忘れられないのは、事実だった。


　イオリの死は突然だった。
　約束の日の前日、雨の山道でスリップ事故を起こし、崖下へ転落したのだ。
　なぜわざわざ雨の夜にそんな山道を車で走っていたのか――？　誰もが、彼のその行動を疑問に思った。
　しかし、ケイだけはその理由を知っていた。これまで、誰にも言えなかったけれど――。
　彼は、下見に行ったのだ。その翌日、ケイと一緒に行く予定だった穴場のホタル狩りスポットへ。
　翌日は晴れたから、さぞかしたくさんのホタルが見られたことだろう。……イオリが生きていれば――。
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		<dc:date>2013-03-21T23:17:25+09:00</dc:date>
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		<title>１</title>

		<description>　ノー残業デーの水曜日。ケイは駅で待ち…</description>
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			<![CDATA[ 　ノー残業デーの水曜日。ケイは駅で待ち合わせたイオリと食事に来ていた。
　とりあえず頼んだビールを呷ってもう一杯オーダーする彼を頼もしい目で見つめながら、自分もいつもより早いペースでジョッキを空ける。

「くはぁー。――仕事の後の一杯目はサイコーだな」

　そろそろ梅雨が始まろうかという、蒸し暑い一日だった。外回りがメインの営業のイオリにとっては、客の前でネクタイを緩めることもできず、辛い一日だったのだろう。

「リョウ君は今日も残業なんて、かわいそう」
「しょうがねぇよ。ちいせぇ会社だから――」

　イオリは適当に話を作ったが、本当に残業しているかどうかはわからない。ケイには黙っていたが、リョウに邪魔されたくなかったので、今回は声をかけなかっただけだ。

「なぁ、ケイ。――今度の週末さ、ホタル狩りに連れてってやるよ。ちょっと山ん中だけど、すげぇ穴場があるんだってさ」
　二杯目のジョッキが来る間に、イオリはいつも以上に真面目な顔でケイにそう言った。

「ホタルって、こんな時期に？」

「関東の方は、この時期だな。……関西じゃ、もう少し遅いんだろうが――。なんでもホタルの種類が違うらしい」

　ホタルなど生で見る機会のなかったケイは、知識の上でしかそれを知らない。しかも、その知識というのは、大学で専攻していた平安時代の古文によるものなので、必然的に『京の都』を中心に語られることになる。
　イオリは基本的には理系だが、こういう雑学にも詳しく、時々ケイを感心させる。

「ふぅん――」
「――で、どうする？　行く？　オレ、車出すけど？」
「うーん、今度の週末は、出勤だしなぁ……。――リョウ君誘えば？」

　リョウはイオリの三歳下の弟だ。ケイと同じ年でノリがよく話も合うので、昔はよく三人で遊んだものだ。大人になった今でも時々三人で出かけることもある。

「あほぅ。大の男が二人でホタル狩りだなんて、気持ち悪ぃだろうよ？」

　イオリとリョウが二人で山の中まで車に向かいホタルを鑑賞するところを想像してケイは、あはは、と声を立てて笑った。

「その次の日曜だったら、いいけど？」

　イオリは少し考えた。

「その次か……ぎりぎりかな。ホタルの時期は短けぇんだよ。――それ逃したら、来年だからな」

　複雑な表情でイオリは念を押した。
　来年まで、待てるだろうか？
　ロマンティックなシチュエーションは、他にも沢山ある。夏の花火大会に、クリスマス――。
　けれど、イオリには、ホタルにこだわる理由があった。

「わかった。じゃ、絶対空けとく。――リョウ君も、誘う？」
「だーかーらー、なんでそこであいつの名前が出てくんだよ？」
「だって、兄弟いつも仲いいじゃん？　そんな珍しいもの、見せてあげたいと思わないの？」
「今回は、無理！」

　特別の日にしたいから――。
　今にも、口にしたいその想いを何とかしまいこんで、イオリはケイに微笑んだ。
　そこへ、「お待たせしました」と二杯目の生ビールが来たので、その話は一旦そこで途切れた。

　――しかし、結局その年、二人がホタルを見に行くことは叶わなかった。
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		<dc:date>2013-03-21T22:44:19+09:00</dc:date>
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